体に異変を感じたとき、健康診断で数値を指摘されたとき、あるいは身近な人が病気になったとき――「自分もいつか」「何か重大な病気では」と、不安が押し寄せることがあります。
その不安は、痛みや不調という目に見えるものだけでなく、「これから先の生活が変わってしまうかもしれない」「もう元の生活には戻れないかもしれない」といった未来への恐れにもつながります。病気への不安は、体だけでなく心にも大きな影響を与えるものです。
なぜ不安になるのか
正体の見えないものに対する恐れ
病気の症状は人それぞれで、同じ不調でも「大したことないかもしれない」と思う日もあれば、「もしかして重い病気では」と感じてしまうこともあります。何が原因かがわからない、いつよくなるのかわからない――この「見えない」ことが、不安を増幅させます。
情報の氾濫にさらされている
インターネットで症状を調べると、軽い病気から重い病気まであらゆる情報が出てきます。検索するほどに不安が膨らみ、実際よりも深刻に感じてしまうことがあります。いわゆる「サイバーチョンドリア(ネットによる健康不安)」に陥ると、日常のささいな体調変化ですら心配の種になってしまいます。
「もしも」の連鎖が止まらない
体調不良をきっかけに、「もし入院が必要になったら」「仕事は続けられるのか」「家族に迷惑をかけるかもしれない」と、次々と不安が広がっていくことがあります。現実的な可能性よりも、自分の想像が不安のスピードを加速させてしまうのです。
不安を和らげるためにできること
事実と向き合う
不安を漠然と抱えているときほど、あえて事実を確認することが大切です。健康診断の結果を放置していないか、必要な検査を受けていないままになっていないか、自分の体に対する情報を正確に把握することで、不安の正体が見えてくることがあります。わからないままでいることが、不安を育ててしまうのです。
信頼できる専門家に相談する
体調に不安があるとき、まずは医師や専門機関に相談するのが基本です。「これくらいで受診していいのか」と遠慮する必要はありません。不安を抱えたまま検索に頼るより、専門家に話を聞いてもらうだけでも心が軽くなることがあります。話すことで、自分の思い込みや勘違いに気づくこともあります。
一人で抱え込まない
家族や友人、信頼できる人に「最近ちょっと不安でさ」と話すだけでも、不安が和らぐことがあります。「病気の話をするのは重たい」と思われるかもしれませんが、誰かと共有することで気持ちのバランスが取れることは少なくありません。共感や安心の言葉が、恐れに飲み込まれそうな心を支えてくれます。
不安を“感じてもいい”と認める
不安は悪者ではない
病気への不安を「弱い自分」「考えすぎ」と否定すると、かえって心の中でその不安が大きくなります。不安は自分を守ろうとする心の反応でもあります。「大切な体に何かあるかもしれない」と気づかせてくれているとも言えます。不安を感じるのは、ごく自然なことなのです。
感情を押し込めない
「気にしないようにしよう」「考えないようにしよう」とするほど、不安は無意識に蓄積されていきます。不安が出てきたときは、それを否定せず、「いま、私は怖がっているな」と一歩引いて観察するようにしてみましょう。感情を受け止めてあげることで、冷静な判断を取り戻す手助けになります。
自分の生活と向き合ってみる
生活習慣を見直すきっかけにする
不安を感じたときこそ、自分の生活を整えるチャンスでもあります。食事のバランス、睡眠時間、運動習慣など、できることから少しずつ見直していくと、「自分で自分を守っている」という安心感が生まれます。小さな行動が、心の安定につながっていきます。
「もしもの備え」で安心感を得る
病気になることを前提に考えるのはつらいことですが、保険や医療費制度、会社の休職制度などを事前に確認しておくことで、「最悪のときでもどうにかなるかもしれない」という安心材料を得ることができます。不安を現実的な視点で整理することは、心の防波堤になります。
不安の中でも、今日を生きる
どんなに健康に気をつけていても、人はいつか病気になります。その現実は誰にも避けられません。でも、不安にとらわれてばかりいると、「今」を楽しむ余裕を失ってしまいます。
病気への不安を感じることは、自分の体や人生を大切に思っている証でもあります。だからこそ、不安と向き合いながら、今日の一日をできるだけ心地よく過ごすことも忘れないでください。
深呼吸をして、おいしいごはんを食べて、誰かと話して笑う。それらの時間は、きっと体と心の免疫力を高めてくれます。不安がある自分を責めず、少しずつでも、自分を安心させる選択を重ねていきましょう。あなたの体も、心も、ちゃんと守られていいのです。
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