子どもを育てる中で、「しつけ」は避けて通れないテーマです。
何が正しくて、どこまで厳しくしてよいのか、どう伝えれば伝わるのか――そんな悩みを抱えながら、日々試行錯誤している親御さんは多いでしょう。
しつけとは、単なるルールを教えることではなく、「子どもが社会の中で安心して生きていけるように育てること」です。叱ることと、愛情を伝えること。そのバランスをどうとるかが、しつけの難しさであり、同時に大切なポイントでもあります。
しつけに悩む理由
どこまで許して、どこから止めるべきか分からない
たとえば子どもが人に乱暴なことを言ったとき、ふざけてやったのか、本気なのか判断が難しいことがあります。
また、家では許せることでも、外では通用しないときもあり、その線引きが難しい。周囲の目も気になり、つい必要以上に叱ってしまったり、逆に注意すべき場面で何も言えずに終わってしまうこともあります。
親自身の育ちが影響している
自分がどんなふうに育てられてきたかも、しつけの方針に影響します。
「厳しくされてつらかったから、自分の子にはやさしくしたい」という人もいれば、「あまり何も言われなかったから、自分の子にはしっかり伝えたい」と考える人もいます。どちらも間違いではありませんが、その背景にある感情が整理されていないと、感情的な関わりになってしまうこともあります。
しつけの本来の意味を考える
しつけは、子どもに「自分で考え、選び、責任を持てるようになるための支え」としてあるべきものです。
ただ命令したり、罰を与えたりすることが目的ではなく、「なぜそうした方がいいのか」を伝え、「どうすればよかったか」を一緒に考えるプロセスが大切です。
叱ることも必要な場面がありますが、それは「行動に対する指摘」であって、「人格の否定」ではありません。「あなたがダメ」なのではなく、「その行動は良くなかった」と区別することで、子どもは自己否定に陥ることなく、自分の行動を見つめ直すことができます。
効果的なしつけのために意識したいこと
感情ではなく、理由で伝える
つい「いい加減にしなさい!」「なんでそんなことするの!」と言ってしまいがちですが、それでは子どもには伝わりません。「今、これをやってしまうとこうなるから、やめようね」というふうに、理由と結果をセットで伝えることで、子どもは自分の行動を考える材料を持つことができます。
一貫性を持つ
今日は怒ったのに、明日は許す――こうした一貫性のなさが続くと、子どもは混乱し、「何がよくて何が悪いのか分からない」という状態になります。すべてにおいて厳しくする必要はありませんが、伝える基準はなるべくぶらさず、夫婦間・大人同士でも方針を共有しておくことが大切です。
叱るより、認めることを増やす
つい悪いことばかりに目が向きがちですが、良い行動をしたときにしっかりと認めることも忘れてはいけません。
「ありがとう」「よくできたね」「自分で考えてえらいね」と声をかけることで、子どもは「こうすればいいんだ」と安心し、自信を持って行動できるようになります。
子どもとの関係を深めるしつけ
しつけとは、子どもを「型にはめる」ことではなく、「自分の気持ちをうまく扱えるようにしてあげる」ことでもあります。
だからこそ、しつけは日々の対話や関係性が土台になります。
子どもが何か問題行動を起こしたときも、まずは「どうしてそうしたのか」を聞いてみることが大切です。「話を聞いてくれる」「気持ちをわかってくれる」と感じることで、子どもは信頼し、話に耳を傾けるようになります。逆に、いつも頭ごなしに叱られてばかりだと、「どうせ話しても無駄」と心を閉ざしてしまうのです。
親だって、完璧じゃなくていい
しつけに悩むということは、それだけ子どものことを真剣に考えている証拠です。でも、親も人間です。イライラしたり、言いすぎたり、後悔することもあるでしょう。
大切なのは、失敗を認めたあとに、どう立て直すかです。「さっきは言いすぎたね」「もう一回、話してみようか」と伝えることで、子どもは「失敗してもやり直せる」ことを学びます。それは、将来の人間関係にとっても大きな力になります。
正解ではなく、対話のある関係を目指して
しつけには「こうすれば必ずうまくいく」という絶対の正解はありません。
大切なのは、その子の性格や状況をよく見て、今、何を伝えるべきかを一緒に考えていくことです。叱るときも、褒めるときも、すべては「この子に育ってほしい姿」を思い描くことから始まります。
しつけは、親子でぶつかり合うこともあるけれど、最終的には「わかり合えた」と感じられる関係を築くための過程でもあります。
完璧でなくてかまいません。大切なのは、試行錯誤しながらも、子どもの未来を信じて、愛を持って関わり続けること。
その積み重ねこそが、子どもにとって最高の「しつけ」になるのです。
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